前編では CPU の負荷テストツールである CpuStres を使って、 Surface Laptop 3(Core i7、16GB RAM、256GB SSD)に負荷を与え、本当にノート PC 冷却台の効果があるのかどうかを検証しました。 その結果、 CPU の温度上昇を抑える効果がある程度認められることを確認しました。
中編となる今回は、一般的な事務作業を行ってみたときの発熱状態を確認し、ノート PC 冷却台がどの程度効果を発揮するか確認してみようと思います。
なぜ前編の結果だけではダメなのか
前編で確認したのは、 CPU に一定の負荷をかけてノート PC 冷却台の効果があるのかどうか、を確認しました。 しかし、実際に PC を使うことを考えてみると、現実の使い方に即した負荷になっているとは言えません。 前編で行ったような、 PC に定常的な負荷を一定時間かけ続ける使い方をすることは、ほとんどないと思います。
そこで今回は、 Surface Laptop 3 を通常の事務作業の中で使ってみて、 CPU 使用率や CPU 温度を計測してみることとします。 それを通して、 Surface Laptop 3 の実際の発熱具合や、ノート PC 冷却台の実際の効果を検証してみます。
ノート PC 冷却台について
中編でも、前編で使用したのと同じサンワサプライ製のノート PC 冷却台(TK-CLN16U2N)を使用します。 詳細は前編の記事を参照してください。
検証内容
私が仕事をする環境では、最低限アンチウィルスソフトウェア、 Teams 、ブラウザー、 VPN 接続用のソフトウェア、 Outlook を起動しています。 今回の検証は通常の利用シーンでの CPU 温度を計測するのが目的ですので、前編のように、これらのソフトウェアを終了することなく、起動した状態で検証を行いました。 また今回は事務作業を実施中の CPU 温度を確認するため、これらのソフトウェアとは別に、 PowerPoint の資料を 1 つ、 Excel ブックを 1 つ起動し、主に PowerPoint の資料を作成するシーンを測定対象としました。 資料作成ですので、当然ながら途中でブラウザーを使用して検索を行ったりもします。 また今回は、 Surface Dock 2 を用いて電力を供給しながら、外部の 4K モニターを接続したデュアルモニター環境で計測しています。
温度測定は、前編と同様、以下の 4 条件で実施しました。
- 直置き(ノート PC 冷却台を使わず、 Surface Laptop 3 を机の上に直接置く)
- 台に置いただけ(ノート PC 冷却台に置くだけ、冷却台のファンは回さない)
- ファン最小(ノート PC 冷却台に置き、冷却台のファンを最小回転で回す)
- ファン最大(ノート PC 冷却台に置き、冷却台のファンを最大回転で回す)
それぞれの条件下で、前述のような事務作業を 30 分間行います。 そのうち最後の 8~10 分間で、 CPU 使用率と CPU 温度を計測しました。 検証時の室温は 28.5 ℃でした。 エアコンは稼働していますが、直接風が ノート PC に当たることはありません。
CPU 温度の測定には Hardware Monitor を使用しました。 今回は、 CPU にかける負荷が一定ではないため、正確な CPU 温度を出すことにあまり意味はありません。 全体的な傾向をつかむ方が重要ですので、結果はグラフとして確認することとします。 平均値もグラフ上で「それっぽい値」を感覚で示すこととします。*1
検証結果
上述の検証を各 1 回ずつ行いました。 計測した時間の中から、 CPU 使用率、 CPU 温度の平均をグラフから「なんとなく」求めた結果、以下のようになりました。
条件 | CPU 最小使用率 | CPU 最大使用率 | CPU 平均使用率 | CPU 最低温度 | CPU 最大温度 | CPU 平均温度 |
---|---|---|---|---|---|---|
直置き | 1% | 61% | 9.5% | 51℃ | 72℃ | 56℃ |
台に置いただけ | 1% | 50% | 9.5% | 49℃ | 70℃ | 54℃ |
ファン最小 | 0% | 63% | 9% | 48℃ | 68℃ | 51.5℃ |
ファン最大 | 0% | 30% | 8% | 46℃ | 62℃ | 49℃ |
結果を見てもわかる通り、 ノート PC 冷却台の効果はかなりにある ことがわかりました。
検証結果の分析
さて、今回は CPU 負荷を一定にすることができない検証ですので、結果として記載した表も、あくまで参考レベルとしか言えません。 特に CPU 最大使用率については、瞬間的に使用率が上がっているだけのケースも多く、外れ値と考えて差し支えない状況であると言えます。 感覚的にノート PC 冷却台の効果を見ていただくためにも、生のグラフを見ていただければと思います。 かなり効果を実感できる結果になっていると思います。
前編で検証した CPU 使用率を一定にする時よりも、全体的に温度が上昇していると言えます。 前回は CPU にだけ負荷をかけるようにしていましたが、今回は一般的な事務作業を行っている関係上、内臓グラフィックやメインメモリ、 SSD にもある程度の負荷がかかっています。 これにより、 PC 内部の温度が全体的に上昇し、 CPU の冷却が追い付かなくなっているものと推察します。
なお今回は SSD の温度も取得しようとしたのですが、 Hardware Monitor のエラーでファンを回転させているときの情報が収集できませんでした。 直置き、台に置いただけのとき、 SSD の温度はどちらも 44 ℃ でした。 Surface Laptop 3 の SSD は、キーボード側の左手を置いたあたりに配置してあります。 ぼやっと左手に温かみを感じましたが、背面のように低温やけどしそうなほどには熱くなりませんでした。 ファン回転時も体感温度に差はなく、ノート PC 冷却台の冷却効果は背面に限られるように感じました。
背面温度
CPU 温度が他のパーツの温度上昇の影響を受けるということは、逆に言えば筐体の温度を低下させることで、 CPU 温度を下げる効果が期待できるとも言えます。 前編の検証結果でも示した通り、背面の温度がノート PC 冷却台の有無、ファンの回転有無によって体感的に差が出ていました。 この本体背面への冷却効果が、事務作業を行う場面では、 CPU 温度の低下に大きく効果を表していた考えることができそうです。
まとめ
今回は一般的な事務作業を Surface Laptop 3 で実施しながら、 4 つの条件下で CPU 温度を計測しました。 計測結果から、ノート PC 冷却台の効果は非常に高いということがわかりました。
後編では、 Surface Laptop 3 に最大負荷をかけ、その時の PC の挙動や、 CPU 温度の計測を行おうと思います。 ソースコードのビルド作業などを行うと、 CPU に対してそれなりの時間、大きな負荷がかかる状況というのは割とよくあります。 そういったときにどういった差が出てくるのかを確認していきたいと思います。