ツナ缶雑記

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Core 第12世代の PC 構成を考える(マザーボードの選択)

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Core 第 12 世代 CPU を用いた PC を作るシリーズの第 6 回は、マザーボードの選定について書いていこうと思います。 前回の記事はこちらからどうぞ。

tsuna-can.hateblo.jp

追加の条件を考える

マザーボード選定にあたって、追加で検討しておくべき条件を整理しておきます。

M.2 SSD スロット

システムドライブ用に 1 つ、仮想マシンのイメージ置き場に 1 つ、将来的な拡張のために 1 つ、全部で 3 本のスロットが欲しいと思っています。 システムドライブ用と仮想マシンのイメージ置き場用は必須で、拡張用のスロットはあればうれしい、という位置づけです。 いずれも確保できるなら PCIe 4.0 で接続したいですが、将来的な拡張スロットは PCIe 3.0 でも妥協できます。

最近はマザーボードに M.2 SSD のサーマルガードが付属しているものも増えています。 PCIe 4.0 で接続する場合、 M.2 SSD は相当発熱します。 サーマルガードなしで運用すると、サーマルスロットリングが発生するリスクが高まるため、できればマザーボード側にサーマルガードが付属していて欲しいです。 サーマルガードはなくても、別途用意すれば問題ないため、あればうれしい、のレベルです。

リア USB

リア側の USB は、何をどのくらい接続するのかによって、仕様を考えておくべきです。 私の場合、主に接続するのはマウスやキーボードなどの USB 機器と、 USB 接続のスピーカー、カメラの 4 つがあります。 いずれも USB 2.0 であれば問題なく動作します。 できる限り PC 直結で使いたいため、最低でも 4 つ USB ポートが必要です。 ただ、ギリギリの数だと拡張性が死んでしまうので、余裕をもって 6 ポートは欲しいところです。

リア側の USB Type-C 端子は今のところ不要です。 特に接続する機器を持っていません。 将来性を見るとあってもよさそうですが、現時点では特に使う予定がありません。

BIOS Flush

CPU やメモリを装着しなくても、 BIOS のアップデートを行うことのできる BIOS Flush 機能は必ずほしいです。 出始めたばかりの CPU やマザーボードは、 BIOS の作りこみが甘い部分も多く、アップデートしないと動ないことが割とよくあります。 メモリのオーバークロックをしたら動かなくなるのもあるあるです。 そういう時、 BIOS Flush ができるのは非常に助かります。

組み込み I/O ボード

前回作ったPC は組み込み I/O ボードがあるマザーボードを使いました。 これがあることで、リア側の見た目が大幅によくなります。 また組み立て時にボードの爪が端子の中に入ってしまうミスが発生しないというメリットもあります。

組み込み I/O ボードは、できればあったほうが嬉しいですが、今回は機能と価格を優先して選定しようと思います。

LAN

私のデスクトップ PC は、有線 LAN でしか接続しません。 有線 LAN は、将来性を考えて 2.5G LAN が欲しいと思っています。

WiFi は不要です。 Bluetooth 接続する機器もありません。

電源フェーズ数

気にしません。 過度なオーバークロックをするつもりは一切ないので、普通に動いてくれれば十分です。 Z690 が搭載されているマザーボードは、どれもある程度のオーバークロックを前提とした回路を持っています。 どのマザーボードヒートシンクがしっかりしていますし、激しい使い方をしない限り、発熱が問題にはなることはありません。 普通の使い方の範疇なら、フェーズ数とかはあまり気にする必要ないと個人的に思います。

必須条件をあげる

ここまでに検討してきた内容から、マザーボードの選択に影響を与える項目について再度まとめてみます。

項目 優先度 グレード、バージョン、数など
チップセット 決定 Z690
対応メモリ 決定 DDR4
フォームファクタ 決定 ATX
M.2 スロット 必須 PCIe 4.0 2 本以上(可能であれば 3 本、サーマルガードもあったらうれしい)
フロント USB Type-C 必須 可能であれば USB 3.2 Gen2x2 (1 ポート分)
フロント USB Type-A 必須 USB 3.2 Gen1 (2 ポート分)
リア USB Type-A 必須 4 ポート(可能であれば 6 ポート)以上、2.0 以上なら何でも OK
BIOS Flush 必須 できればバックパネルに欲しい
組み込み I/O ボード あったらうれしい、レベル
リア USB Type-C あったらうれしいがコスト次第
LAN 有線 2.5G (WiFi は不要)
電源フェーズ どうでもいい

この条件に合う Z690 マザーボードを探していきます。

マザーボードのグレード

Z690 のマザーボードだと、現時点で最安値はおよそ 26,000 円程度です。 高グレードになってくると、 70,000 円を超えるものもあったりします。 様々なところで言われていますが、高グレードのマザーボードを買ったところで、 PC の性能が上がる、なんてことはありません。 電源フェーズが増えたり、本格水冷に対応していたり、高クロックのメモリが使えたり。。。 普通に使う分にはほとんど関係ない機能差が、価格に反映されています。 そういったところを求めるユーザーには良いのでしょうが、一般的な使い方しかしない人には無駄な機能でしかありません。 私も一般的な使い方しかしないので、できる限り低コストで必要な機能の付いたものを選定しようと思います。

もちろん価格の近い物であれば、デザインとかの要素を絡めて決めていいと思います。 そもそも自作 PC は、自由に自分の好きなものを選べるのが良いところです。 悩みぬいて自分なりの価値基準で選定すれば幸せになれると思います。

DDR4 対応の Z690 マザーボード (ATX) を比較する

私は私の価値基準に従って、価格帯の低い物から、必要十分なものを探していこうと思います。 まずは今回比較検討するマザーボードを、価格帯と対応メモリ、フォームファクタで絞り込んでみます。

今回は ATX サイズ、 DDR4 対応の Z690 マザーボードのうち、 2022 年 1 月 25 日現在、最安値が 34,000 円を下回っているものを抽出しました。 これらを要件別に並べて、整理していきます。








M.2 SSD スロット

M.2 SSD のスロット数を PCIe のバージョン別に並べてみます。 かっこ外の数字はスロットの本数を、カッコ内の数字はスロットの中でマザーボードにサーマルガードがついているスロット数を表しています。

メーカー 製品 PCIe 4.0 PCIe 3.0
ASRock Z690 Pro RS 2 ( 1 ) 1 ( 0 )
GIGABYTE Z690 UD DDR4 (rev. 1.0) 3 ( 1 ) 0
MSI PRO Z690-A DDR4 3 ( 1 ) 1 ( 0 )
ASRock Z690 PG Riptide 2 ( 1 ) 1 ( 0 )
ASUS PRIME Z690-P D4 3 ( 1 ) 0
ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4 4 ( 3 ) 0
ASRock Z690 Steel Legend 2 ( 2 ) 1 ( 0 )

さすがにこの価格帯のものだと、サーマルガード付きの M.2 スロットは控えめになっています。 私の場合、 PCIe 4.0 のスロットが 2 本必須なので、どれを選んでも問題はなさそうです。 3 本目のストレージを PCIe 4.0 で接続するとなると選択肢は多少絞られますが、今回そこは必須にしていません。

並べてみると、 TUF GAMING Z690-PLUS D4 はこの中では特異な存在です。 同価格帯では M.2 SSD の機能が相当充実しています。

リア USB

次はリアパネル側の USB ポートを見ていきます。 まずは優先度の高い Type-A のポートから比較します。

メーカー 製品 2.0 3.2 Gen1 3.2 Gen2
ASRock Z690 Pro RS 2 2 2
GIGABYTE Z690 UD DDR4 (rev. 1.0) 4 4 1
MSI PRO Z690-A DDR4 4 2 1
ASRock Z690 PG Riptide 2 2 2
ASUS PRIME Z690-P D4 2 2 1
ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4 0 4 2
ASRock Z690 Steel Legend 0 4 1

ここは結構差があります。 必須要件の 4 ポートはどれもクリアしていますが、 6 ポートとなると脱落するものがいくつかあります。

続いて Type-C ポートも比較してみます。

メーカー 製品 3.2 Gen1 3.2 Gen2 3.2 Gen2x2
ASRock Z690 Pro RS 0 0 0
GIGABYTE Z690 UD DDR4 (rev. 1.0) 0 0 1
MSI PRO Z690-A DDR4 0 0 1
ASRock Z690 PG Riptide 0 0 1
ASUS PRIME Z690-P D4 0 0 1
ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4 1 0 1
ASRock Z690 Steel Legend 0 1 0

私の場合リア側の Type-C ポートは利用予定がないので、今のところどうでもいいかなーと思います。 TUF GAMING Z690-PLUS D4 は少し珍しくて、リア側に Type-C ポートが 2 つあります。

BIOS Flush / 組み込み I/O ボード

BIOS Flush と組み込み I/O ボードをまとめて比較してみます。 BIOS Flush の列は、ボタンがどこにあるかを示しています。 バックパネル上にあったほうが操作しやすいので評価は上です。

メーカー 製品 BIOS Flush 組み込み I/O ボード
ASRock Z690 Pro RS バックパネル上 ×
GIGABYTE Z690 UD DDR4 (rev. 1.0) マザーボード
MSI PRO Z690-A DDR4 バックパネル上 ×
ASRock Z690 PG Riptide バックパネル上 ×
ASUS PRIME Z690-P D4 - ×
ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4 -
ASRock Z690 Steel Legend バックパネル上

ここもかなり差がある部分でした。 ここまで比較的高評価だった TUF GAMING は、 必須と考えていた BIOS Flush がありません。

このクラスだと組み込み I/O ボードがないものもちらほらあります。 ここは優先度低い項目なので、機能面を優先して考えたいところです。

LAN

続いてネットワーク機能も比較してみます。

メーカー 製品 有線 LAN 無線 LAN
ASRock Z690 Pro RS Realtek 2.5G -
GIGABYTE Z690 UD DDR4 (rev. 1.0) Realtek 2.5G -
MSI PRO Z690-A DDR4 Intel 2.5G -
ASRock Z690 PG Riptide Killer 2.5G -
ASUS PRIME Z690-P D4 Realtek 2.5G -
ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4 Intel 2.5G -
ASRock Z690 Steel Legend Realtek 2.5G -

今回調べたマザーボードは、すべて 2.5G LAN に対応しており、大きな差はありません。 ただし、同じ 2.5G LAN でもメーカーには違いがあります。 メーカーを気にする方もいると思いますが、私はあまり気にしていません。 また無線 LAN も使わないので、搭載していなくて構いません。 今回比較する範囲では、機能差はほとんどないと言えそうです。

フロント USB

今回選定した PC ケースは、 MSI MPG SEKIRA 100P でした。


これには USB 3.2 Gen 1 Type-A のポートが 2 つ、 USB 3.2 Gen2x2 Type-C のポートが 1 つ付属しています。 これらを使いこなせるかどうかは重要なポイントです。

まずはフロント USB Type-A のピンヘッダを見てみます。

メーカー 製品 2.0 3.2 Gen1 3.2 Gen2
ASRock Z690 Pro RS 2 2 0
GIGABYTE Z690 UD DDR4 (rev. 1.0) 2 1 0
MSI PRO Z690-A DDR4 2 2 0
ASRock Z690 PG Riptide 2 2 0
ASUS PRIME Z690-P D4 2 2 0
ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4 2 1 0
ASRock Z690 Steel Legend 2 2 0

USB Type-A の場合、マザーボード上にピンヘッダが 1 つあれば、ケース側で 2 ポート分の USB Type-A 端子を利用できます。 ですので、USB 3.2 Gen 1 Type-A のピンヘッダーが 1 つあれば十分です。 この要件はどのマザーボードもクリアしています。

続いて USB Type-C のポートも見ていきます。

メーカー 製品 3.2 Gen1 3.2 Gen2 3.2 Gen2x2
ASRock Z690 Pro RS 0 0 1
GIGABYTE Z690 UD DDR4 (rev. 1.0) 1 0 0
MSI PRO Z690-A DDR4 0 1 0
ASRock Z690 PG Riptide 1 0 0
ASUS PRIME Z690-P D4 1 0 0
ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4 0 1 0
ASRock Z690 Steel Legend 0 0 1

USB Type-C は、マザーボード上 1 ポートでフロント 1 ポート分の端子を利用できます。 今回の PC ケースはは USB 3.2 Gen2x2 対応のポートが 1 つあります。 ぜひとも USB 3.2 Gen2x2 を使いたいところです。

どのマザーボードも USB Type-C 用のピンヘッダは装備しています。 しかし、採用しているバージョンは結構差があります。 USB 3.2 Gen2x2 を使おうとすると、 ASRock の Z690 Pro RS または Z690 Steel Legend しか選択できません。

評価項目を並べる

ここまで確認してきた内容をまとめて、評価項目ごとに要件との合致具合を確認してみます。 私の用途で差異がなかった部分は表から除外しています。

メーカー 製品 M.2 SSD リア USB(A) フロント USB Gen2x2(C) BIOS Flush 組み込み I/O ボード
ASRock Z690 Pro RS 6 ×
GIGABYTE Z690 UD DDR4 (rev. 1.0) 9 ×
MSI PRO Z690-A DDR4 7 ×
ASRock Z690 PG Riptide 6 × ×
ASUS PRIME Z690-P D4 5 × × ×
ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4 6 ×
ASRock Z690 Steel Legend 5

こう眺めてみると、機能面での私の要求に最もあっているのは ASRock の Z690 Pro RS でした。 MSI の PRO Z690-A DDR4 も同等の機能を持っていますが、今回重視しているフロント USB 3.2 Gen2x2 の機能差によって、 Z690 Pro RS を選ぶことにしました。 M.2 SSD は PRO Z690-A DDR4 のほうが機能豊富で要件にあうのですが、今回はフロント USB Type-C のほうを優先しようと思います。

また Z690 Steel Legend もいいところをついています。 リア側の USB ポートが希望数に対して 1 つ足りないものの、最低限の数はクリアしています。 またほかの条件はすべてクリアしています。 ここは正直価格差で考えました。 機能面での差異は組み込み I/O ボードのほかに、リア USB のバージョン差異とポート数の差異があります。 Z690 Pro RS は 26,050 円、 Z690 Steel Legend は 33,800 円です*1。 この価格差と機能差/装備差が適切なのか考えた結果、コストとリア USB のポート数を優先することにしました。 7,000 円差は大きいです。

Z690 Pro RS は PCIe 4.0 の M.2 SSD が 2 本あり、そのうちサーマルガードがついているものが 1 つしかありません。 この辺は SSD 選定の時に注意が必要そうです。 組み込み I/O ボードがないのは残念ですが、現時点では必要十分な構成が組めそうです。


まとめ

今回はマザーボードの選定について考えてきました。 すでに選定している PC ケース MSI MPG SEKIRA 100P との組み合わせや、私の用途を総合して考えたところ、 ASRock の Z690 Pro RS を採用することが決まりました。

次回は CPU クーラーの選定について書こうと思います。

*1:いずれも 2022 年 1 月 25 日現在、価格.com の最安値で比較。