ツナ缶雑記

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Core 第12世代の PC 構成を考える(CPU クーラーの選択)

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Core 第 12 世代 CPU を用いた PC を作るシリーズの第 7 回は、CPU クーラーの選定について書いていこうと思います。 前回の記事はこちらからどうぞ。

tsuna-can.hateblo.jp

12700K を冷やせるクーラーは何か

私の PC の用途は主にアプリケーション開発です。 その過程で仮想マシンを数台起動しています。 こういった用途の場合、アプリケーションのコンパイルをしている時だけドーンと CPU を使います。 長時間 CPU を酷使することはありません。 長くても 1 分程度、フルパワーで回ってくれれば十分です。

12700K の消費電力を確認する

まずは 12700K の消費電力を確認しましょう。 公式の情報から確認します。

www.intel.co.jp

消費電力は以下の通りです。

項目 電力
Processor Base Power 125 W
Maximum Turbo Power 190 W

Processor Base Power ( 以下 PBP ) は、従来でいうところの TDP に相当する値です。 それに対して Maximum Turbo Power ( 以下 MTP ) は PL2 までブーストしたときの最大消費電力を指します。

第 12 世代の CPU は、必要があれば、できる限り PL2 の状態を維持するような動作をするようです。 そうなると、 CPU クーラーは少なくとも MTP の 190 W を冷やせると言われている製品を選んだ方がよさそうです。

CPU クーラーの選択肢

190 W の CPU を冷やせるクーラーとなると、ハイエンドの空冷クーラーか、簡易水冷かの選択になります。 定番の虎徹だと少々荷が重い感じです。 最近「虎徹 Mark II Rev.B」となり、 LGA 1700 ソケットにも対応したみたいですが、力不足は否めません。


私は空冷クーラーが好きです。 簡易水冷をあまり信じきれないんですよね。 水漏れ等の事故が怖いですし。 空冷クーラーのほうがメンテナンスの手間がかからないので、できることなら多少無理をしながらでも空冷クーラーを選んでいます。 私の用途であれば、 しっかりした空冷クーラーなら 12700K でも十分冷やせると思います。

ハイエンド空冷クーラーと言えば、いくつか定番のものがあります。 1 つ目が Noctua の NH-D15 です。


空冷クーラー最強との呼び声も高く、私も Ryzen 9 5900X をこれで冷やしています。

少々話は変わって。。。

LGA 1700 の CPU と NH-D15 を組み合わせると、あまりよくない結果になる、というレポートがチラホラ上がっています。 LGA 1700 の CPU は、マザーボードに取り付けたとき、ヒートスプレッダの中央部分がへこむらしいのです。 NH-D15 のベースプレートは、完全にフラットになっていて、中央部分がへこんでしまう CPU とうまく密着しないようです。

https://www.igorslab.de/alder-lakes-kuehlungs-problem-wieder-gerade-biegen-um-5c-ilm-mod-fuer-intel-lga1700-sockel/

他の CPU クーラーは、マウントが若干凸型になっているものもあり、NH-D15 より偶然うまく CPU と密着するケースがあるそうです。 CPU のヒートスプレッダ以外に、マザーボードの剛性とかの要因もありそうですし、製造時の個体差も原因になるように思います。 真偽はよくわかりませんが、探すといろいろ情報が出てきますし、 youtube でも検証結果がいろいろ出ているので探してみると良いと思います。

話をもとに戻して。。。

2 つ目は、 DEEPCOOL の ASSASSIN III です。


これもハイエンド空冷代表格のクーラーで、 NH-D15 と同等レベルの性能を誇ります。 公式では 280 W まで対応、と言っています ( 信じるか信じないかは。。。 ) 。 190 W の CPU なら十分に冷やしてくれるでしょう。

3 つ目も DEEPCOOL の AK620 です。


2021 年 10 月にリリースされた比較的新しい CPU クーラーです。 このクーラーの良いところは、何といってもそのデザインです。 キューブ状で非常にシンプルなデザインをしています。 今までハイエンド空冷クーラーは、ゴツゴツしていてデザインより性能に全振りしたようなイメージの物が多かったと思います。 そのような中、このクーラーは、洗練されたデザインをしていると個人的には思います。 またフィンの部分が格子柄になっていて、シンプルさの中にも遊びがある感じが個人的にポイント高いです。

性能も十分です。 公式では最大 260 W まで対応とうたっています。 ( それを信じるのであれば ) 12700K を冷やすのに十分な性能を持っていると言えます。

周囲との干渉を考える

さて、ハイエンドの空冷 CPU クーラーを選択するにあたり、一番気を付けなければならないのは PC ケースやマザーボードとの干渉です。 ハイエンドになればなるほどフィンやファンが巨大化するため、モノによっては取り付けることができなくなります。

メモリとの干渉による高さを見積もる

ハイエンド空冷 CPU クーラーは、多くの場合メモリスロットの上空にファンが配置されます。 ヒートシンクや RGB のついているイマドキのメモリの場合、結構な高さを持っている場合があります。 この場合、ファンを上の方にオフセットして取り付けなければなりません。

各 CPU クーラーが仕様として表示しているサイズは、メモリとの干渉を一切無視して書いているものも少なくありません。 例えば ASSASSIN III は、高さ 165 mm となっています。 しかしこの高さは、 ASSASSIN III のファンをほとんどすべてのメモリと干渉する位置に取り付けたときの高さとされています。 こういった観点で、ここまでにあげてきたクーラーの本当の高さを確認します。

今回は、比較的高さの低いヒートシンク付きのメモリを例に、実際の高さを計算してみます。 このようなロープロファイルメモリは、大体高さ 35 mm 程度に収まります。 ファンの回転による振動の影響を受けないよう、メモリの上に 2 mm 程度の空間を設けると仮定すると、ファンの下に 37 mm の空間を設けたいです。 以下の図のような配置で、メモリを取り付けたとき、どのくらいの高さになるかを見積もってみます。 余裕があるものについては、最大どの程度の高さのメモリが装着できるか計算してみました。

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対象 公称値 見積もった高さ 最大メモリ高さ
Noctua NH-D15 165mm 170mm 35mm
Deepcool ASSASSIN III 165mm 177mm 35mm
Deepcool AK620 160mm 160mm 45mm

スペック表を見る限り、 14cm ファンを搭載する 2 機種は、ある程度ファンをオフセットしないとメモリが入りませんでした。 35mm のメモリを取り付け、 ファンをその 2mm 上に取り付ける場合、 NH-D15 は 170mm 、 ASSASSIN III は 177mm となりました。

AK620 は、 12cm ファンということもあり、メモリとの干渉はほとんどなさそうです。 ファンをオフセットしなくても 47mm の空間が確保されているため、メモリとファンを 2mm あけたとしても 45mm のメモリまで入ります。 ロープロファイルのメモリなら全く問題ありません。

PC ケースとの干渉

次に見るのは PC ケースとの干渉です。 今回選定している MSI MPG SEKIRA 100P は、公式の情報を見るに、高さ 170 mm までの CPU クーラーを取り付けることができるようです。


そうなると、 ASSASSIN III は今回使うことができません。 NH-D15 も相当ギリギリで、余裕を持たせたいなら最低でも 33mm 以下のメモリから選定しなければなりません。 ヒートシンク付きのメモリだとなかなかクリアするのが難しい数字になってきます。 AK620 は余裕のあるサイズと言えそうです。

AK620 を選定

今回はサイズ的に余裕のありそうな AK620 を選定することにします。 冷却性能的にも問題なさそうですし、何よりデザインが非常に気に入りました。

今回採用している MSI MPG SEKIRA 100P は、サイドパネルがガラスです。 CPU クーラーもばっちり外から見えるので、気に入ったデザインのものを使うとさらに愛着がわきそうです。

次回はメモリの選択を行います。